これまで男性の職業というイメージのあったトラック運転手ですが、近年女性ドライバーも少しずつ増えてきています。ここでは、女性ドライバーが増えている理由や現状の数、給料や待遇などについて解説しています。
1. 女性ドライバーはどれくらいいるのか?
物流業界で働く女性ドライバーは、実際どの程度いるのでしょうか。
1-1 全国の女性トラック運転手はおよそ2万人
総務省が平成25年に行った労働力調査によると、トラック運転手全体の中で女性ドライバーはおよそ2万人となっていました。これはトラック運転手全体のわずか2.4%となっており、まだまだ多いとはいえない現状です。
1-2 国が女性ドライバーのためにプロジェクトを発足
しかし、大型免許を取得している女性の数は13万人以上いることもわかっており、潜在的な女性ドライバーの数は環境次第で増加する、と考えられています。実際に上記調査が行われた翌年、国土交通省が女性ドライバーの活躍を促進する「トラガール促進プロジェクト」を発足し、女性がトラック運転手として働きやすい環境の確保や改善といった取り組みを行っています。
2. トラガール促進プロジェクトの存在が女性ドライバー増加の理由
では、厚生労働省のトラガール促進プロジェクトについてもう少し詳しくご紹介しましょう。
2-1 「トラガール」とは
トラガール促進プロジェクトの「トラガール」とは、女性のトラック運転手(トラックガール)を縮めたものです。トラガール促進プロジェクトのサイト上で現役の女性ドライバーにスポットを当て、免許の取得方法や女性トラック運転手の魅力をアピールするといった活動を行っています。
2-2 現役女性ドライバーの声を反映、改善が進む
プロジェクト発足から4年が経ち、実際に働いている女性ドライバーから寄せられた「女性用のお手洗いが完備されていない」「女性であることを理由に応募を断られたことがある」といった声を集めて改善に取り組み、関係企業などへの周知や環境整備も進んでいます。
2-3 女性ドライバーが24%増加した地域も
昨今の人手不足に加え、女性ならではの細やかさや行き届いたサービスといった長所を評価し、積極的に女性ドライバーを採用する企業も増えてきています。実際に、中部運輸局が平成28年に発表したデータでは、管轄地域の女性トラック運転手の割合が1年間で24%も増加していました。
現役女性ドライバーがトラック運転手のやりがいや楽しさを発信することで応募者が増え、企業側でも積極的に女性ドライバーの採用を行い、人口が増えることで環境の整備も進む、という良い循環ができつつあるのです。
3. 男性と比べて給料はどう?
女性ドライバーと男性ドライバーでは、トラック運転手としての給料に違いがあるのでしょうか。
3-1 現状では年収で100万円ほどの差がある
厚生労働省が行っている賃金統計調査によると、現状では男性ドライバーと女性ドライバーとでは年収にしておよそ100万円、月収でおよそ8万円程度女性の方が低くなっています。理由としては「女性だから賃金が低い」というよりも、長年勤めているドライバーに男性が多いことと、出産や育児などで産休を取ったり時短勤務をする女性が一定数いること、年収の高い大型ドライバーやトレーラー運転手より、近隣を小型車で走る宅配や配送ドライバーに女性が多いことなどが挙げられます。
3-2 今後は男女で給料に差を設けない企業が主流となる
重い荷物を運ぶ部署に女性が入らないようにする、といった配慮は必要ですが、同じ仕事内容であれば男女の性差だけで給料に違いがある企業は淘汰されていくと予想されます。実際に、鈴与自動車運送株式会社でも給与水準は男性も女性も差を設けていません。
参照:http://wwwtb.mlit.go.jp/chubu/press/pdf/kousei20160329.pdf
参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2017/dl/05.pdf
4. 女性ドライバーが活躍できる環境とは?
女性ドライバーが活躍できる環境は、従来から少しずつ変化を見せています。
4-1 「女性だから活躍できる」から「性差なく活躍できる」へ
従来までは、女性ならではの丁寧な対応や気配りを活かせる職場として、一般家庭を回る宅配ドライバーや企業間でのルート配達業務といった職種が選ばれてきました。しかし、今後は「女性だから」「男性だから」といった性差による職業の壁は薄くなり、男性ドライバーの割合が依然として高い大型トラックやトレーラー運転手などでも、女性が活躍できる場は増えつつあります。
4-2 女性の雇用に対して理解ある企業を選ぶ
積み降ろしに関しても、リフトなどの荷役機器を使えば男女関係なく作業が可能です。トラック運転手は高齢になっても勤務が可能な、長く働ける職種の1つでもあります。走行中に複数のリスク回避に意識を向けたり、貨物を丁寧に扱うといった能力もトラック運転手として大切です。育休や産休、業務上の相談など、女性ドライバーへの配慮や理解に積極的な企業であるかどうかが、活躍できる環境であるかどうかの大きな決め手となるでしょう。
5. おすすめのドライバーの種類
女性トラックドライバーにおすすめの種類としては、家庭とのバランスを大切にしたいなら長距離よりも短距離ドライバーが良いでしょう。大型免許とけん引免許を持っているなら、勤務時間がある程度決まっていて積み降ろし作業がほとんどなく、近距離のエリアを回るトレーラー運転手もおすすめです。
トラック運転手は経験を積めば、長く働ける立派な技術職です。これを機会に、運転が好きな女性はドライバー職への応募をぜひ検討してみてください。